レトロゲームとマンガとももクロと

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レトロゲームを題材に短編小説を書いてみた ガッツマンの日常:第二話 愛のキューピッド大作戦!

ガッツマンの日常:第二話 愛のキューピッド大作戦!

 

 ガッツマンの日常:第一話 ゲームショップ「オーロラ」

 

第一章:愛のキューピッド大作戦!

ゲームショップ「オーロラ」のいつもの午後。ミドリが楽しそうに店の掃除をしている横で、ガッツマンはいつになく腕を組み、唸っていた。彼女は今ではアルバイトとして店にすっかり馴染み、その顔には以前のような陰りは微塵もない。

その時、店先に懐かしい顔が現れた。高校時代の同級生、タカシだ。

「おっ! タカシじゃないっすか! 久しぶりっすね! この前は結婚式、呼んでくれてありがとうっす! ユキさん、本当に綺麗だったたっす! それで、どうっすか新婚生活は? 」

ガッツマンの満面の笑顔とは裏腹に、タカシの表情はひどく落ち込んでいた。その顔からは幸せオーラなど微塵も感じられない。

「ガッツマン…聞いてくれよ…今本当に幸せなんだ。なのに、食卓だけがちょっと…スリリングでさ…」

タカシの口から出たのは、新妻の料理が壊滅的だという悲痛な愚痴だった。焦げ付いた朝食、味のない夕食、そしてたまに現れる得体の知れない物体。「愛は冷めないが、食卓は冷え切っている…いや、焦げ付いている!」と頭を抱えるタカシに、ガッツマンは深く同情した。

カウンターの奥から、おやっさんが静かに二人のやり取りを見守っていた。彼の口元には、どこか昔を懐かしむような、それでいて苦笑いのような複雑な表情が浮かんでいる。

「そりゃ大変っすね、タカシ! 愛があれば何でも乗り越えられるって言いますけど、お腹が空いちゃあ、根性も萎えちまいますからね!」

ガッツマンは、どうにかしてタカシを助けたいと頭を捻った。タカシの奥さんであるユキさんの人柄をよく知っているガッツマンは、彼女が繊細な性格で、直接「料理が下手だ」などと言えば深く傷ついてしまうだろうと考えていた。何か、自然に、そして楽しく料理の腕を上げてもらう方法はないものか…。

しばらく考え込んだガッツマンは、突然「閃いたっす!」と叫び、店の床をバンバンと叩いた。おやっさんが「また始まったか」とばかりに苦笑する中、ガッツマンの目がキラリと輝いた。その勢いに、隣でホコリを拭いていたミドリも思わず手を止めた。

「よし、決まったっす! 『カモフラージュ福袋大作戦』っす!」

ガッツマンが考え出したのは、ユキさんが普段好きそうなジャンルのゲームの中に、さりげなく料理系のゲームを紛れ込ませた福袋をプレゼントするという作戦だった。これなら、ユキさんが傷つくことなく、楽しく料理を学ぶことができるはずだ。

「ミドリちゃんも手伝ってくれっす! ユキさんの好きなゲームのジャンルは…RPGと、あと可愛いキャラの出てくるパズルゲームとかっすかね?」

ガッツマンの指示に、ミドリはテキパキと棚からゲームソフトを選び始めた。彼女自身、この店でゲームの面白さを知り、今ではすっかり詳しくなっていた。

「はい、ガッツマンさん! このRPGと、あとこのパズルゲームがいいと思います。人気もありますし、奥さんもきっと喜ぶと思います!」

ミドリが選んだゲームを確認し、満足そうに頷いたガッツマンは、いよいよ本命のゲームを取り出した。

「そして、その中にこれを紛れ込ませるっす!」

ガッツマンが自信満々に取り出したのは、『しゃべるDSお料理ナビ・まるごと帝国ホテル』のカセットだった。

「これっす! 『しゃべるDSお料理ナビ・まるごと帝国ホテル』! これはもう、料理のプロがマンツーマンで教えてくれるようなもんっす! 音声と写真で分かりやすく、201種類の料理が学べる、まさに『料理の攻略本』っす! これさえあれば、どんな料理も怖くないっすよ!」

ガッツマンは、まるで自分が料理人になったかのように身振り手振りで説明した。食材の選び方から専門用語まで学べる「お料理事典」の充実ぶりも熱弁し、これでユキさんは料理の達人になると確信しているようだった。

「そして、念のため、この2つもこっそり忍ばせておくっす!」

続けてガッツマンが取り出したのは、『クッキングママ』と『俺の料理』のパッケージだった。

「こっちの『クッキングママ』は、切る、炒める、揚げる! 基本のテクニックをミニゲーム感覚で学べる最高の教材っす! 子供向けって侮っちゃいけないっすよ、これがまた結構なガチ難易度で、夢中になること間違いなしっす! そして『俺の料理』! 料理の段取りと効率を学ぶには最高っす! アナログコントローラーを使いこなせば、まさに体が覚えるってやつっすよ!」

ガッツマンの熱弁を聞きながら、ミドリは感心したように頷いた。

「すごいですね、ガッツマンさん! 直接言うんじゃなくて、ゲームで楽しく学んでもらうなんて、ガッツマンさんらしい優しい作戦ですね!」

ミドリの言葉に、ガッツマンは得意げに胸を張った。

おやっさんは、腕を組みながらその様子を見ていた。「ゲームで料理をな…昔じゃ考えられん時代になったもんだ」と唸ったが、その表情はどこか満足げだった。ガッツマンの奇想天外な発想が、いつも誰かを笑顔にするのを知っているからだ。

「どうっすか、タカシ! ユキさんが好きそうなゲームの中に、これらを自然に忍ばせておくっす! これぞ、僕の発想力と根性で編み出した『愛のキューピッド大作戦』っす!」

タカシは半信半疑ながらも、ガッツマンとミドリの熱意に押され、福袋を抱えて店を後にした。

 

第二章:福袋の秘密、そして愛の食卓

タカシは、ガッツマンから託された福袋を抱え、自宅へと向かった。

「ただいまー」

玄関を開けると、妻のユキが笑顔で出迎えた。

「あら、おかえりなさい! 今日は随分荷物が多いわね?」

「ああ、ちょっと『オーロラ』に寄ってさ。ガッツマンが『これは絶対に損しない福袋っす!』って言うもんだから、つい買っちまったんだ!」

タカシは、少し照れながら福袋をユキに差し出した。ユキの顔がパッと明るくなる。

「へえ、福袋! 何が入ってるんだろう? ドキドキするわね!」

ユキは嬉しそうに福袋を受け取ると、リビングのテーブルに広げた。一つ、また一つと福袋からゲームのパッケージを取り出していく。

「わぁ、これ欲しかったRPGだ! すごい、こんなのが入ってるなんてラッキー! あ、こっちも、可愛いパズルゲームじゃない! 」

タカシは、ユキが喜ぶ姿にホッと胸を撫で下ろした。ユキは次々とゲームを確認し、その度に感嘆の声を上げた。そして、福袋の底から、最後に残っていた見慣れないパッケージを手に取った。

「あら? これは…『しゃべるDSお料理ナビ』? あと、『クッキングママ』に、『俺の料理』?」

ユキは首を傾げながら、それらのゲームを眺めた。タカシは一瞬、焦った。だが、ユキの表情はあやしむというより、むしろ興味津々といった様子だった。

「へぇ~、こんなゲームもあるんだ。私、料理はちょっと苦手だから、こういうの、面白いかも!」

意外な反応に、タカシは内心でガッツポーズをした。完璧なカモフラージュだ。

「あ、ああ、そうか! 試しにやってみたら、意外と楽しいかもな!」

ユキはさっそくDSを取り出し、『しゃべるDSお料理ナビ』を起動した。画面から流れる丁寧な音声ガイドに、ユキの目は釘付けになった。その日から、ユキは空き時間を見つけては、料理ゲームに熱中するようになった。

特に『クッキングママ』では、画面の指示に合わせて包丁を動かすミニゲームに夢中になった。最初は材料を切り損ねたり、焦がしたりと失敗ばかりだったが、何度も繰り返すうちに、指先の感覚が研ぎ澄まされていく。ユキはゲームクリアの達成感と共に、実際の包丁さばきや火加減のコツを無意識のうちに学んでいった。

そして、『俺の料理』では、複数の料理を同時進行で作る段取りの難しさに挑んだ。皿洗い、材料を切る、炒める、…と、次々に発生するタスクを効率よくこなすには、瞬時の判断力と手際の良さが求められる。最初はパニック状態だったが、何度も失敗を繰り返すうちに、どの作業を優先すべきか、どうすればスムーズに料理が進むのか、その「段取り力」が飛躍的に向上していった。

最初はぎこちなかったコントローラーさばきも、次第にスムーズになり、ゲームの中で様々な料理を作り上げていく。そして、ゲームで得た知識を、実際の料理にも応用し始めたのだ。

 

第三章:愛の食卓、そしてガッツマンの夢

数ヶ月後、再びタカシが「オーロラ」に顔を出した。その顔は以前のような疲れきったものではなく、満面の笑みを浮かべている。

「ガッツマン! 本当にありがとう! おかげさまで、うちの食卓が劇的に変わったんだ!」

「最近じゃあ、俺が仕事から帰ると、『今日の卵焼きは『クッキングママ』で特訓した成果だよ!』とか言って、得意げに教えてくれるんだ! そしてちゃんと上手いんだ!」

タカシはガッツマンの丸坊主頭を、感謝を込めて軽く叩いた。ガッツマンは、目を潤ませながら、これ以上ないほどの満面の笑みを浮かべた。今回の一件も、彼の中の「最高の体験」として深く刻み込まれたことだろう。

「いや〜、よかったっすね、タカシ! それこそが真の勝利っす! いや、これは新聞の一面を飾るレベルのハッピーエンドっす!」

ガッツマンは、人の幸せを自分のことのように喜んでいた。ミドリも、そんなガッツマンとタカシの様子を見て、温かい気持ちになった。

おやっさんも、二人の様子を嬉しそうに眺めていた。「世の中、ゲームで救われることもあるからな」と、深く頷く。彼の店が、ただゲームを売るだけでなく、人々の心に寄り添う場所であることを、改めて実感しているようだった。

そして、ふとガッツマンは遠い目をして呟いた。

「僕もいつか、こんな素敵な奥さんが欲しいっすねぇ…」

ガッツマンの「最高の体験」は、今日もまた、誰かの笑顔のために続いていく。

ゲームショップ「オーロラ」そこは沢山の人に光を届ける、最高の空間なのだ…。

 

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