レトロゲームとマンガとももクロと

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レトロゲームを題材に短編小説を書いてみた ガッツマンの日常 番外編:ミドリちゃんの日常

ガッツマンの日常 番外編:ミドリちゃんの日常

 

第一章:夜の至福とウィザードリィ外伝

「早く寝なさい」

母親の声が、ミドリの部屋に響く。

「はーい!」

ミドリは元気よく返事をした。部屋の電気を消し、ベッドに横たわる。今日も一日、楽しかった。

ゲームショップ「オーロラ」に迷い込み、ガッツマンとおやっさん、そしてウィザードリィというゲームに出会ってから、ミドリの日常は大きく変わった。かつては学校に馴染めず、虚ろな目をしていた彼女の顔には、今ではいつも明るい笑顔が浮かんでいる。

ウィザードリィに救われたミドリは、ガッツマンに相談しながら、次々とシリーズ作に手を出すようになっていた。

「ウィザードリィの1、2、3を遊んだら、やっぱり次はゲームボーイのウィザードリィ外伝がお勧めっすね! 今でも遊び続けている人がいるくらいのとんでもない名作っすよ!」

ガッツマンの熱い勧めに従い、ミドリは最近、寝る前に1時間だけウィザードリィ外伝を遊ぶのが至福の時間となっていた。暗闇の中で光るゲームボーイの画面が、彼女だけの小さな冒険の世界を映し出す。今日もまた、新たなフロアを踏破し、珍しいアイテムを手に入れた。充実感に包まれ、ミドリは静かに目を閉じた。

 

第二章:変化する日常

休み時間、ミドリは友達のモモと他愛もない会話をしていた。モモは、クラスに馴染めずにいたミドリに初めて話しかけてくれた、明るく元気な女の子だ。

「あー、また今月もお小遣いが足りない〜!」

モモが頭を抱えながら嘆く。

「モモも、バイトしてみたら?」

ミドリが言うと、モモは「うーん、でもバイトする時間あったら遊びたいしな〜」と笑った。

そんな会話をしていると、突然クラスの隅から「いっ…痛い!」という声が聞こえた。誰かが指をカッターで切ってしまったようだ。周りのクラスメイトが「大丈夫!?」「どうしよう!?」と声を上げる中、ミドリはすかさず自分のポーチから絆創膏を取り出し、その子の元へ駆け寄った。

「大丈夫?、これ、貼って。」

ミドリの落ち着いた対応に、クラスメイトは驚いた顔で「ありがとう!」とお礼を言った。

その翌日。体育の授業後、誰かが「うぅ…お腹が痛い…」と座り込んでしまった。ミドリは迷わずポーチから胃薬を取り出し、差し出した。

「これ、飲んでみて。少しは楽になるかも」

またしても「ありがとう!」という感謝の言葉が返ってきた。

さらに数日後。「あー、頭痛い…」と訴えるクラスメイトに、ミドリは頭痛薬を差し出した。

「これ、めちゃくちゃ効くよ!」

その様子を見ていたモモが、しみじみと呟いた。

「ミドリ、本当に変わったね」

絆創膏、薬、そして飲み物やちょっとしたお菓子。ミドリはいつの間にか、困っているクラスメイトに、さっと手を差し伸べるようになっていた。

「もう、ミドリってばお母さんじゃん!」

モモが楽しそうに笑う。その言葉に、ミドリも嬉しそうに微笑んだ。そんな小さな出来事の繰り返しによって、ミドリは少しずつ、クラスメイトたちと自然に馴染んでいった。放課後、友達と談笑しながら帰る日々が、当たり前になっていた。

 

第三章:ゲームがくれた「準備」の力と新たな世界

「なんで、こんなに変われたんだろう?」

自宅のベッドで、ミドリはふと天井を見上げた。クラスに馴染めなかった頃の自分が、まるで遠い昔のことのように感じられる。その答えは、彼女が寝る前に遊んでいるウィザードリィの中にあった。

ウィザードリィでは、迷宮の奥に進む前に、徹底した事前準備が必要不可欠だ。毒の罠にかかったら即座に毒を回復する薬を、石化の攻撃をくらったら石化を回復する薬を、体力が減ったら回復薬を……。どんな状況にも対応できるよう、常にパーティーの持ち物を確認し、必要なアイテムを準備しておく必要がある。そんな繰り返しの経験が、無意識のうちに日常生活にも役立っていることに、ミドリは今、感動していた。

困っている人がいたら、すぐに対応できる。それは、ウィザードリィで培った「もしも」に備える習慣だったのだ。

さらに、オーロラでのアルバイトも、彼女の成長を後押ししていた。少ないお小遣いの中で、友達にお菓子や薬をあげるのは大変だが、アルバイトで金銭的に余裕が増えたことで、よりためらわずに優しさを差し伸べられるようになっていた。

その他にも、おやっさんやガッツマン、そして個性豊かな常連さんたちとの何気ない会話も、ミドリの人生観を広げてくれていた。「色々な考え方があるんだな」と、視野が広がり、人との接し方もより柔軟になっていたのだ。

あの時、勇気を出してゲームショップ「オーロラ」のドアを開けたこと。ガッツマンさんが勧めてくれたウィザードリィを手に取ったこと。そして、このお店でアルバイトを始めたこと。その全てが、今の自分を作り上げている。ミドリは心からそう思った。

 

第四章:モモの訪問とゲームショップの魅力

「ちょっとミドリ、聞いてるの!?」

スマートフォンから、モモの弾んだ声が聞こえてきた。どうやら、ミドリが考え事をしている間に、電話の向こうでモモが話し続けていたらしい。ミドリは慌てて「ごめんごめん、ちょっと考え事してた!」と笑いながら、電話の向こうの友達の顔を思い浮かべた。

「ねぇ、ミドリ!今度さ、ミドリがバイトしてるゲーム屋さん、行ってみてもいい?」

モモの突然の申し出に、ミドリは驚いた。モモはゲームにはあまり興味がないはずだった。

「え、モモが?どうしたの急に?」

「だってさ、ミドリ、最近すっごく楽しそうなんだもん!なんか、ミドリがバイトしてるお店って、すごく面白いところなのかなって思ってさ!それに、ミドリがそんなに変われた理由も、ちょっと知りたくなっちゃった!」

モモの言葉に、ミドリの胸が温かくなった。自分の変化が、友達にも伝わっていることが嬉しかった。

「うん!もちろん!いつでも大歓迎だよ!ガッツマンさんもおやっさんも、きっと喜ぶと思う!」

週末。モモは約束通り、「オーロラ」にやってきた。店内に入ると、所狭しと並べられたゲームソフトや、壁一面に貼られたポスターに目を輝かせた。

「うわー!なんか、すごいお店だね!見たことないゲームがいっぱい!」

ガッツマンは、モモがミドリの友達だと知ると、いつものように熱弁を振るい始めた。

「ようこそ!オーロラへ!ミドリちゃんの友達さんっすね!何か気になるゲームはあるっすか?どんなジャンルでも、このガッツマンが最高のゲームをチョイスしてみせるっす!」

モモは圧倒されながらも、ガッツマンの熱意に引き込まれていく。おやっさんは、そんな二人を温かく見守っていた。

「いつもこんな感じなの?」

モモがこっそりミドリに尋ねると、ミドリは苦笑しながら頷いた。

「うん、いつもこんな感じ。でもね、ガッツマンさんの話、聞いてると面白いんだよ」

モモは、ガッツマンが熱く語るゲームの話に耳を傾けたり、棚に並んだ見たことのないパッケージを眺めたりした。そして、ふと、あるゲームのパッケージに目が留まった。それは、ミドリが最近夢中になっている『ウィザードリィ外伝』だった。

「これ、ミドリがやってるゲーム?」

モモが尋ねると、ミドリは嬉しそうに頷いた。

「そうだよ!すごく面白いんだ!ダンジョンを探検して、強いモンスターを倒して、レアなアイテムを集めるの!」

「ふーん……なんか難しそうだけど、ミドリがそんなにハマるなんて、どんなゲームなんだろう?」

モモは興味津々といった様子で、パッケージを手に取った。ガッツマンは、その様子を見て、ニヤリと笑った。

「おや、ミドリちゃん、友達にもウィザードリィの魅力を伝えるんすか!いいっすね!ウィザードリィは奥が深いっすからね!最初は戸惑うかもしれないっすけど、やり込み要素が半端ないんすよ!」

モモは、ミドリとガッツマンの話を聞きながら、少しずつゲームの世界に引き込まれていくのを感じた。

「ねぇ、ミドリ。私にも、なんかおすすめのゲーム、あるかな?」

モモの言葉に、ミドリは満面の笑みを浮かべた。

「もちろん!モモにぴったりのゲーム、一緒に探そうよ!」

ミドリの日常は、ゲームと、そして温かい人々の支えによって、これからも輝き続けるだろう。そして、その輪は、少しずつ広がっていく。

 

 

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