矢口高雄の熱き釣り人生を描いた自伝的漫画『三平クラブ』

「面白い漫画は何ですか?」と聞かれたら、
その時の精神状態で答えが変わるものです。
しかし、「好きな漫画は何ですか?」と聞かれれば、
『ハンターハンター』や『サラリーマン金太郎』と答えますね。
どんな人が読んでも、絶対に面白いと思える作品だと思うからです。
ただ、私が心から一番好きな漫画は、この二作ではありません。
それは、『釣りキチ三平』です。
どこが好きなのかと聞かれると困ってしまうくらい大好きなので、
その感想は未だに書けていません。
もう少し、自分のレベルが上がるまでは、迂闊に書けないというのが本音です。
なので、今回はその外伝的な作品から、感想を書いてみたいと思います。
私にとって
『ウィザードリィ・リルガミンサーガ』が『釣りキチ三平』だとすれば
今回の『三平クラブ』は、
その外伝的な作品である『ウィザードリィ・エクス』といったところでしょうか。
本家を書く前に、あえて感想を書いてみる、
そんな釣りキチ三平の外伝的な名作釣り漫画、
『三平クラブ・その後の釣りキチ三平』の感想です。
大好きな釣りを封印した男、矢口高雄の復活劇
1999年にメディアファクトリーから発売された
『三平クラブ・その後の釣りキチ三平』は、矢口高雄さんの自伝的な作品です。
『釣りキチ三平』という、
今も愛され続ける名作釣り漫画の“その後”を描いた作品…ではありません。
なんと、三平君たちは一切登場しません。
作者である矢口先生が、
連載当時には書けなかった自身のことを、実話を元に漫画的にまとめた作品なのです。
物語は、とある釣り番組からの出演依頼から始まります。
各界の著名人を集めた大規模な釣り番組に、
釣りキチ三平の作者として矢口先生に白羽の矢が立ちます。
しかし、当時の矢口先生は、実は全く釣りをしていなかった時期だったそうです。
なぜなら、5年前に全ての趣味を封印していたからです。
矢口先生は、12年間勤めていた銀行員を辞め、漫画家になろうと決意しました。
その際、全ての欲望を捨てて漫画に全精力を注ぎ込むため、
「自分が一番好きで、最も捨てて困る趣味は何か」と考え、
子供の頃から大好きだった釣りを封印したのです。
その決死の覚悟と努力があったからこそ、
『釣りキチ三平』という不朽の名作が生まれたわけですね。
そんな決意から5年が経ち、偶然にも釣り番組の出演依頼が舞い込みます。
「この機会に、大好きだった釣りを解禁してもいいのでは?」
奥さんの一言で、長年我慢し続けた釣りの世界に舞い戻っていく…というのが、
この漫画の始まりでした。
実は、矢口先生は『釣りキチ三平』を執筆中、
ほとんど釣りに行っていなかったそうです。
子供の頃の思い出や、銀行員時代に培ったノウハウを全て注ぎ込んで、
あの名作を描き続けていたのです。
この作品は、そんな釣り番組をきっかけに
大好きな釣りを楽しむ人生に戻った先生が、
『三平クラブ』を発足するまでの12年間を凝縮した作品なのでした。
釣りを通じて描かれる、釣り人たちの熱きヒューマンドラマ
この『三平クラブ』は、完全なる釣り漫画です。
本家の『釣りキチ三平』も釣り漫画ですが、この二作には大きな違いがあります。
『三平クラブ』は、釣り漫画でありながら、
釣りシーンをメインにするのではなく、
釣り人たちのヒューマンドラマに焦点を当てている作品なのです。
釣り人というのは、勝手気ままに楽しむ人が多いそうです。
大きな魚を釣ることに命をかける人もいれば、
小さな魚をいかに小さな竿で釣るかに情熱を注ぐ人もいる。
つまり、一人ひとりが独立した個性豊かな人たちなのです。
しかし、そんな釣り人たちも、
釣り場で何度も顔を合わせるうちに、自然と親しくなり、
同時にライバル心も芽生えてくる。
年齢も、職業も、育った環境も全く違う人々が、
一つの釣り場で仲良く釣りを楽しむ一方で、ライバルとして火花を散らす。
矢口先生は、そんな釣り仲間たちと長年付き合う中で起こった実体験を、
漫画の作品にしました。
だからこそ、この漫画は釣り漫画であると同時に、
心温まるヒューマンドラマの漫画でもあるのです。
そして、この漫画のメインの題材は、なんとアユ釣りです。
本家『釣りキチ三平』が、アユやイワナ、コイ、ニジマスなど、
全国各地の様々な魚を題材にしていたのに対し、
『三平クラブ』は、ほぼ99%がアユ釣りを描いています。
アユ釣りの大好きな面々が繰り広げる、熱きヒューマンドラマなのです。
アユ釣りというのは本当に難しく、
餌を付けて釣るのが一般的な魚釣りなのに、
アユに関しては、アユをおとりにアユを釣るという、
昔の人がよく考えついたなと感心してしまう釣り方なのです。
今、釣りキチ三平を購入する人の大半は、
自分の好きな魚の話だけを購入するそうです。
ブラックバスが趣味ならブラックバスの話を、
カジキマグロが好きならカジキマグロの話を。
アユ釣りが趣味の人が読むのは、まさにこの『三平クラブ』というわけですね。
『三平クラブ』は、『釣りキチ三平』を読むための最高の道しるべ
この『三平クラブ』は、釣りキチ三平のキャラクターたちは一切出てきません。
三平君、ゆりっぺ、まさはる、魚紳さん…彼らが喋ることはないのです。
しかし、この作品を「外伝」と言っても問題はありません。
なぜなら、この漫画に登場する実在の人物たちが、
『釣りキチ三平』に出てくるキャラクターのモデルになっているからです。
私は『釣りキチ三平』を全巻は持っていませんが、90%くらいは持っています。
だからこそ、『三平クラブ』を読んだ時に、
「このシーンが、あのシーンの元だったのか!」という答え合わせが、
本当に面白いのです。
『釣りキチ三平』を読み、『三平クラブ』を読み、
もう一度『釣りキチ三平』を読む、というエンドレスな読書体験が始まりました。
この作品だけでも最高に楽しいのですが、
本家『釣りキチ三平』と合わせて読めば、その面白さは倍増すること間違いなしです。
矢口高雄さんの12年間を凝縮した、名作釣り漫画『三平クラブ』。
ぜひ、本家とセットで読んで、その感動を味わってみてください。
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