63歳のおじいさんが、『ウィザードリィ』をガチで遊んだらこうなる

『ウィザードリィ』というコンピューターゲームの素晴らしさは、
これまでに延々と書きました。
そんな大好きな『ウィザードリィ』ですが、
すんなりと遊べたかと言うと、まったくそんなことはありませんでした。
近くのゲームショップを全て回っても一切購入できず、最高にじらされたのです。
「最高にプレイしたいのに、どんなに探してもゲームソフトが売っていない…」。
こんな、もどかしい期間にどうやって気持ちを我慢していたかというと、
「『ウィザードリィ』の名前が付く作品を全て買う」でした。
- 『ウィザードリィ』の漫画
- 『ウィザードリィ』の小説
- 『ウィザードリィ』の攻略本
- 『ウィザードリィ』のファン向けの本
『ウィザードリィ』の名前さえ付いていれば、とにかく買いまくっていました。
ゲームソフトは持っていないのに、
『ウィザードリィ』関連の物だけはたくさん持っている。なんとも不思議な状態でした。
そんな時に偶然購入したのが、
この『ウィザードリィ日記 パソコン文化の冒険』です。
正直に言って、この作品に出会わなければ、
「『ウィザードリィ』こそが最高のゲーム」とはならなかったかもしれません。
それくらい、私にとって大事な一冊でした。
『ウィザードリィ日記』とは、どんな本?
この『ウィザードリィ日記』という本は、
ゲームの完全な初心者である「63歳のおじいさん」が、
『ウィザードリィ』というディープな世界にどっぷりハマっていく、
半分妄想、半分現実の世界をエッセイとしてまとめた本です。
まさに、34年前のブログ本といった感じでしょうか。
この63歳のおじいさんというのが、
「矢野徹(やのてつ)」という人です。
彼は翻訳家でありながら、
ファンタジー小説を執筆している作家でした。
翻訳では『巌窟王』、小説では『カムイの剣シリーズ』が有名です。
そんな矢野さんが、
あの『ウィザードリィ』という中毒性たっぷりのゲームに
出会ってしまったらどうなるのか?
その時間経過を、日記形式で読むことができるのが、今作『ウィザードリィ日記』なのです。
ウィザードリィの成分は薄いけど、魅力は濃厚
この本を読んで最初に思ったことは、
「『ウィザードリィ』の成分が薄い」でした。
タイトルが『ウィザードリィ日記』ですから、
当然『ウィザードリィ』成分が満載の本だと思ってしまいますよね。
しかし、実際は『ウィザードリィ』のゲーム日記というよりは、
矢野徹さんが色々なパソコンゲームに触れて、
どう思ったかを日記に記している、という内容でした。
そのたくさんのゲームの中でも、
特にはまったのが『ウィザードリィ』だった、というわけです。
そのため、「『ウィザードリィ』のプレイ日記だ」と思って買ったら、
成分の薄さにびっくりしたのですが、
そんな薄さでも、本職の執筆テクニックを駆使して、
『ウィザードリィ』というゲームの奥深さについては十分に説明されていました。
『ウィザードリィ』の成分は薄いけど、
このゲームを好きになるには十分すぎるほど、濃厚な内容だったのです。
特に面白かったのが、
ゲームが届く前日に、キャラクターの名前や職業を全て考えて待つという、
まるで「遠足前の小学生」のようなウキウキ加減です。
63歳のおじいさんを、こんなにもワクワクさせるのですから、
『ウィザードリィ』というゲームは本当にすごいんだなと、
さらにプレイしたくなりました。
グルメレポーターが最高の料理を紹介するかのように、
文章を執筆するプロが史上最高のゲームをレビューしていく。
これほど贅沢な本はない、と言い切れるほどの凄さがありました。
手塚治虫が宝塚歌劇団をモチーフに『リボンの騎士』を描いたように、
矢野徹さんが『ウィザードリィ』をモチーフにエッセイを書いていたのですから、
当時の読者には最高のご褒美だったのではないでしょうか。
『ウィザードリィ』の成分は薄いのですが、
その薄さすらも圧倒的な文章テクニックで最後まで読ませてしまう。
素晴らしすぎる一冊でした。
まるで自分自身の体験のように読める
この作品を読んだ時、
私はまだ『ウィザードリィ』を体験したことがありませんでした。
そして、著者である矢野さんも、
『ウィザードリィ』を体験したことがない状態で書き始めます。
事前の情報は調べているものの、
基本的にはまっさらな状態でゲームを遊んでいきます。
- 「どうやってセーブをするのか?」
- 「このモンスターはどんなキャラクターなのか?」
- 「どうやって地図を作ればいいのか?」
このように、『ウィザードリィ』を遊んだ時のファーストインパクトを、
一から楽しめるわけです。
「モンスターなのに、友好的とは?」
「バブリースライム?日本語に訳すと、ぶくぶく、ぬるぬる?」
「おかしい。マップを書いているのに、全く合わない?」
初めて『ウィザードリィ』を体験した人が、
誰もが一度は思うであろうお約束から、
「さすがファンタジー小説のプロ」と思わせる斬新な切り口まで、
まさに『ウィザードリィ日記』というタイトルがふさわしい出来でした。
『ウィザードリィ』を遊んだことがなくても、
「『ウィザードリィ』とは最高に楽しいゲームなんだな」という気持ちが、
文章からひしひしと伝わってきました。
完全なゲーム初心者だからこそ見えてくる
「RPGの疑問点」がうまく表現されていましたので、
ゲーム初心者という貴重な時期にしか書けなかった、
唯一無二のエッセイだったのかもしれません。
『ウィザードリィ日記』のまとめ
なぜ読んでほしいのか?
63歳のおじいちゃんが、どんどんゲームに熱中していく。
そんなワクワクドキドキが最高でした。
ブログという世界がなかった頃にブログ本が出版されているのですから、
当時の衝撃を今の時代に体験してみてください。
何がそんなに面白いのか?
『ウィザードリィ』だけでなく、
『ブラックオニキス』や『カムイの剣』など、
たくさんのゲームをプレイしていますので、
レトロなパソコンゲームが好きな人にとっては、何倍も楽しめるのではないでしょうか。
今すぐ買う理由ってあるの?
正直に言って、この作品を読んだ後は、
『ウィザードリィ』を猛烈に遊びたくなります。
「ああ、『ウィザードリィ』が遊びたい!」という感じです。
そんな作品ですが、
『ウィザードリィ』を遊んだことがなくても十分に楽しめますし、
何千時間と費やした人が読んでも、
あの頃の新鮮な気持ちを思い出すことができると思います。
私の場合は、この本を読んだ時はまだ『ウィザードリィ』を未体験でした。
だからこそ、自分なりのイメージを当てはめて一緒に冒険できました。
そして、時間が経った今、
『ウィザードリィ』というゲームを完全にイメージして読むことができ、
あの時よりも感情移入して読めました。
同じ本なのに、『ウィザードリィ』をプレイする前と後で、
もう一度読み返すことができるのは、この作品の最高に良いところかもしれませんね。
日記をまとめた本なので、愚痴も多いです。
「日本という国は、これからどうやって進んでいくんだ」といった
日常の部分も書かれています。
しかし、おじいさん特有の愚痴の部分も、
「矢野さんって、こういう人だったんだ…」という良いアクセントになっていますので、
面白いエッセイを探している方にも楽しんでもらえるのではないでしょうか。
自分の原作小説のゲームなのに
「全くクリアできなくて、ファンの少年に教えてもらう」など、
『ウィザードリィ』以外のゲームの話も楽しむことができます。
興味のある方は、この機会に読んでみてはいかがでしょうか。
63歳のおじいちゃんすら虜にしてしまう、そんな経過をお楽しみください。
小説版の『ウィザードリィ』を繰り返し読み、
『ウィザードリィ日記』を繰り返し読み、
「『ウィザードリィ』がやりたいな…」と思っていた毎日も楽しかった。
そんなあの頃を思い出させてくれる、
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