苦痛の先に待つ快楽。二度と遊ぶか!と叫びたくなるRPG『ドラゴンスレイヤー英雄伝説2』

ゲームをプレイしていて、腹が立つことってありませんか?
楽しむために遊んでいるはずなのに、なぜかムカムカしてくる。
それなのに、不思議とやめられない。とめられない。
そんな中毒性のあるゲームは、心に深く刻まれるものです。
今回ご紹介する『ドラゴンスレイヤー英雄伝説2』は、
まさにそんなゲームでした。
何度も「こんなゲーム二度と遊ぶか!」と叫び、
コントローラーを投げ出したくなるほどの苦痛を味わいましたが、
結局はエンディングまでたどり着いてしまいました。
そして今、振り返ってみると、
その苦痛こそがこのゲームの醍醐味だったのだと思えるのです。
王道と異端が同居する、ユニークなRPG
『ドラゴンスレイヤー英雄伝説2』は、
1993年にエポック社からスーパーファミコン用RPGとして発売されました。
日本ファルコムの「ドラゴンスレイヤー」シリーズの第6作目であり、
前作『英雄伝説』の続編にあたります。
物語は、世間知らずの王子アトラスが、
大量発生したモンスターの謎を解き明かすために旅に出るという、
一見すると王道的なファンタジーRPGです。
しかし、その中身は一癖も二癖もあります。
- 画面と戦闘のギャップ: フィールド画面は『イース』のようなアクションRPG風ですが、敵に接触すると『ドラゴンクエスト』のようなコマンド選択式の戦闘に切り替わります。
- シンボルエンカウント: 敵はフィールド上にシンボルとして表示される『ロマンシング サ・ガ』タイプで、不意のエンカウントに怯えることはありません。
- 個性豊かな仲間たち: 生真面目な王子アトラス、口の悪い魔法使いランドー、お金持ちのお嬢様フローラ、そして正体不明の仮面の男シンディなど、ひと癖もふた癖もある仲間たちとの冒険は、決して退屈なものではありませんでした。
ゲームは全5章に分かれており、
各章で発生する厄介事を解決することで次の大陸へと進めます。
「ワプの翼」という便利なアイテムを使えば、一度行った街に瞬時に戻れるので、
情報収集は非常にスムーズでした。
最初は王道のファンタジー物語として進んでいきますが、
物語が深まるにつれて、SF的な要素が絡み合い、
先の読めない展開へと発展していきます。
このジェットコースターのようなストーリー展開も、
このゲームの中毒性を高める要因の一つでした。
自由すぎる育成システムが、無限の可能性を生む
このゲームの最大の魅力の一つは、
レベルアップ時に得られるポイントを、
好きなように振り分けてキャラクターを育成できるシステムです。
- 「つよさ」: 攻撃力と最大HPに直結
- 「かしこさ」: 魔法の威力に直結
- 「すばやさ」: 行動順に影響
- 「うんのよさ」: 命中力とクリティカルに直結
この4つのパラメータを自由にカスタマイズできることで、
プレイヤーは自分だけのパーティーを作り上げることができます。
- 口の悪い魔法使いランドーを、設定を無視してムキムキの戦士に育てる。
- 怪力の持ち主シンディを、あえて最強の魔法使いにする。
- アイテムを最速で使うスピードスターを目指す。
- クリティカルヒットを連発するラッキーマンを目指す。
このように、キャラクターの設定を活かすも殺すもプレイヤー次第です。
この自由度の高さが、レベル上げを単なる作業ではなく、
新しいキャラクターを試す楽しい時間にさせてくれました。
ただし、「つよさ」を上げないと最大HPが伸びないため、
後から泣きを見ることもあります。
主人公のHPが2000なのに、お嬢様のHPが500だった時の、
あの絶望感もこのゲームの醍醐味だったと言えるでしょう。
独特すぎる魔法システムと、絶望的な難易度
『英雄伝説2』の世界には、
「魔法の書」を店で購入して魔法を覚えるという、独特のシステムがあります。
さらに特殊なのが、「MPカプセル」というシステムです。
各キャラクターは、最大7個まで魔法を覚えることができ、
それぞれが独立したMPカプセルを持っています。
このカプセルは、フィールドで時間が経過することで満たされ、
満タンになると魔法が使えるようになります。
しかし、一度魔法を使うと補充に時間がかかるため、魔法の連発はできません。
さらに、覚えた魔法は最大7回しか使えないという厳しい制限もありました。
- 攻撃魔法を多めにすれば、回復魔法が使えず、すぐにパーティーが崩壊する。
- 回復魔法を多めにすれば、攻撃手段が乏しくなり、戦闘が長期化する。
このジレンマが、ゲーム序盤から中盤にかけて、プレイヤーを大いに悩ませました。
結局、回復魔法を多めに覚えさせ、戦闘が単調になる傾向があり、
慣れるまでは本当に辛いシステムでした。
苦痛の90%、楽しさの10%
このゲームを語る上で避けて通れないのが、
「経験値とゴールドが、自分の強さによって変わる」という絶望的なシステムです。
- スライムを倒して経験値とゴールドを得る。
- レベルが上がると、同じスライムを倒しても経験値とゴールドが減る。
- さらにレベルが上がると、経験値もゴールドもゼロになる。
このシステムが、レベル上げを極めて困難なものにしました。
序盤はサクサク進んでも、
中盤以降は1レベル上げるのに1時間かかることもざらでした。
クリアまでに要した時間約45時間のうち、
約40時間はレベル上げに費やしたと言っても過言ではありません。
「こんなゲーム二度と遊ぶか!」
そう叫んでゲームを中断しても、
2〜3日経つと「ちょっとだけ…」と誘惑に負けて、またプレイしてしまう。
この繰り返しでしたね。
しかし、この苦痛を乗り越えた先に、本当に面白い部分が待っていました。
- 濃厚なストーリーが、苦痛を忘れさせてくれる。
- キャラクターの自由な育成が、次のレベルアップを心待ちにさせてくれる。
- ハラハラドキドキのボス戦が、達成感を与えてくれる。
このゲームの楽しさは、
90%の苦痛を乗り越えたからこそ、10%の幸せが何倍にも感じられるという、
完全なるマゾゲーです。
地獄を乗り越えた者だけが見る景色
『ドラゴンスレイヤー英雄伝説2』は、
スーパーファミコンだけでなく、メガドライブ、PCエンジン、プレイステーション、
セガサターンでも楽しめます。
特に、PS版とSS版は『英雄伝説』と2がセットになった豪華版なので、
初めてプレイする方にはこちらがおすすめです。
そして、もしスーパーファミコン版をプレイするなら、
連射コントローラーを用意することをおすすめします。
フィールドの敵は無限に湧くので、
攻撃ボタンを固定すれば自動で戦闘を繰り返すことができます。
もちろん、この方法でも簡単にゲームオーバーになりますが、
少しでもレベル上げの苦痛を軽減できるかもしれません。
苦痛を味わったからこそ、今では大好きなゲームだと言えますからね。
この機会に、地獄と快楽が同居する、
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