レトロゲームとマンガとももクロと

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トワイライトシンドローム・再会  怖いというより、深く、そして泣ける…。日常に潜む非日常を描いた、名作ホラーアドベンチャー

怖いというより、深く、そして泣ける…。日常に潜む非日常を描いた、名作ホラーアドベンチャー

日差しが強くなり、身も心もアクティブになる季節。

 

そんな時こそ、あえて身の毛もよだつようなホラーゲームで、

涼しい気分を味わいたくなりますよね。

 

今回ご紹介するのは、ただ怖いだけではない、

奥深い物語で私たちを魅了する隠れた名作です。

 

ヒューマンドラマとしてのホラー『トワイライトシンドローム・再会』

 

2000年にスパイクから発売された、

プレイステーション専用のホラーアドベンチャーゲーム

『トワイライトシンドローム・再会』。

 

このゲームには、ファンにとって感慨深い歴史があります。

 

前作の『トワイライトシンドローム』は

「ヒューマン」というゲームメーカーから発売されていましたが、

同社の事業撤退に伴い、今作は「スパイク」から発売されました。

 

開発スタッフの熱意が、会社が変わってもシリーズを存続させたのです。

 

前作が、女子高生3人組の身の毛もよだつ恐怖体験を軸にしたゲームだったのに対し、

今作は、2人の姉妹が主人公となり、日常の中に潜む非日常を描いています。

 

心霊写真を撮れば5000円の賞金がもらえる…。

 

そんな甘い誘いに乗って、

主人公が怪奇現象に首を突っ込んでいくところから物語は始まります。

 

しかし、単なる恐怖体験だけでは終わりません。

 

次々と起こる奇妙な出来事を通して、

彼女たちの人生は大きく変わっていくことになります。

 

平凡だった世界が、少しずつ、そして確実に、

非日常の濃厚な人生へと塗り替えられていく様は、

プレイヤーを物語へと深く引き込んでいきます。

 

なぜホラーゲームなのに泣けるのか?

 

このゲームをプレイする前、

多くの人は前作のような心臓が止まるほどの恐怖を期待するでしょう。

 

しかし、このゲームの本質は、ホラーというよりも「ヒューマンドラマ」にあります。

 

最初のエピソードこそ、

トワイライトシンドロームの中でも特に怖いと評判ですが、

その後は不思議な話や切ない話が中心となり、拍子抜けしてしまうかもしれません。

 

「やっぱり、名作ゲームの続編はパワーダウンしちゃうのかな?」と、

嫌な予感を抱く方もいるでしょう。

 

しかし、このゲームの本質は、個々のエピソードが持つ深いテーマにあります。

 

体験していくエピソードの一つ一つが、

実は最後の結末へと見事に繋がっていくのです。

 

その物語の繋がりに気づいた時、きっと鳥肌が立つでしょう。

 

「やっぱりこのシリーズはすごいんだな」と、誰もが納得するはずです。

 

確かに、心臓が止まるような恐怖を求めるプレイヤーには物足りないかもしれません。

 

しかし、精神的な怖さ、つまり「日常の中に潜む異質さ」に関しては、

文句なしのクオリティです。

 

薄気味悪い体験を重ねるうちに、目には見えない、

不思議な物を感じ取れるようになり、

その結果、ストーリーにグイグイと引き込まれていきます。

 

そして、深い物語を体験していくうちに、

いつの間にか涙がこぼれてしまう…。

 

「恐怖」から「切なさ」に変わった瞬間こそ、

「トワイライトシンドロームをプレイして、本当に良かったな…」と思える瞬間なのです。

 

より遊びやすくなった、親切なシステム

 

前作は、ひとつのエピソードをクリアするのに90分もかかるうえ、

選択肢を間違えれば即ゲームオーバーという、非常にシビアなシステムでした。

 

そのため、すべてのエンディングを見るには、とてつもない根気が必要でした。

 

しかし、今作では「チェックポイント」が導入され、

失敗しても途中からやり直すことができるようになりました。

 

これにより、「この選択肢を選んだらどうなるんだろう?」という好奇心から、

気軽に色々な選択肢を試せるようになりました。

 

前作では

「この選択肢を選びたいけど、きっと死んでしまうから無難な方を選ぼう…」と、

プレイヤーが保守的になりがちでした。

 

しかし、今作では

「この選択肢を選んだら大変なことになりそう…いや、やり直せるから選んでみよう!」と、大胆な選択ができるようになり、プレイしていても精神的にかなり楽になりました。

 

そして、このゲームは文章テキストが本当に面白いのです。

 

たとえ悲惨な結末であろうと、

全てのテキストを読みたくなる不思議な魔力が秘められています。

 

この親切なシステムのおかげで、

より多くのプレイヤーがトワイライトシンドロームの魅力を

深く堪能できるようになったのです。

 

確かに、死への緊張感が減ったことで

ホラーゲーム感はマイルドになりましたが、

その分、奥深いストーリーに集中できるようになったため、

結果的には大成功だったと言えるでしょう。

 

 

恩田陸作品が好きな方には絶対におすすめ

 

このトワイライトシンドロームシリーズ全般に言えることなのですが、

作家の恩田陸さんが好きな方には絶対におすすめです。

 

例えば、学校を舞台にしたミステリー作品『六番目の小夜子』や、

ささいな都市伝説が大きな事件へと発展していく『球形の季節』など、

恩田陸作品には「日常のすぐ隣に非日常がある」という独特の世界観があります。

 

この世界観が、

トワイライトシンドロームの雰囲気と見事にマッチしているのです。

 

ですから、恩田陸作品が好きならトワイライトシンドロームを、

トワイライトシンドロームが好きなら恩田陸作品を、

ぜひ手に取っていただきたいと思います。

 

 

隠れた名作を、今こそ再評価してほしい

 

このゲームが発売されて以降、

トワイライトシンドロームのシリーズは、長らく途絶えていました

(後にDSで発売されましたが、最近は新作が出ていません)。

 

元の会社であるヒューマンがなくなってしまったので、仕方ないのかもしれませんが、

これほど心に訴えかけてくる素晴らしいシリーズが、

ゲームの歴史の中に埋もれてしまうのはあまりにも勿体ないことです。

 

「それなら、今からでも感想を書いてみようじゃないか」と、

このレビューを書きました。

 

マイナーゲームであるため、

中古価格は高めに設定されているかもしれませんが、

その価格以上の価値は必ずあります。

 

そして、このゲームをプレイした人が

「トワイライトシンドロームを、他の人にもプレイしてほしい!」と思って、

自分のブログやSNSに熱い感想を書く。

 

それを読んだ他の人が、またこのゲームに興味を持つ…。

 

そんな形で、このシリーズの再評価が進んでいくことを願ってやみません。

 

隠れた名作を、このまま隠しておくには勿体ない。

 

『トワイライトシンドローム・再会』は、まさにそんな作品なのです。

 

 

こちらから購入できます