『ベストプレープロ野球』、野球ゲームの常識を覆した「脳内野球」の金字塔
「自分で打てないのならば、真剣に作戦を考える」――この言葉に、
あなたの野球魂が震えるなら、今回ご紹介するゲームはきっと心を掴むでしょう。
アスキーが1988年にファミコンで発売した『ベストプレープロ野球』は、
それまでの野球ゲームの常識を打ち破り、監督として緻密な戦略を練るという、
全く新しい遊び方を提供しました。
まさに「無限に遊べる」「野球ゲームの決定版」と称される、不朽の名作です。
「改造ツール」いらず!?『ベストプレープロ野球』が切り開いた「データ野球」の未来
かつて、中古ゲームショップの片隅には、
当たり前のように「改造ツール」が並んでいました。
レベル上げが面倒だから、アイテムをコンプリートしたいから、
あるいは選手のデータをいじりたいから…。
そんな理由で、多くのゲーマーが改造ツールに手を出した時代がありました。
私自身は購入したことはありませんでしたが、
周りの友人は当たり前のように使っていました。
確かに、単にイベントシーンだけを楽しみたい人にとっては、
まさに「神のツール」だったことでしょう。
もしかしたら、改造ツールを使わずとも連射パッドを使いまくっていた私たちも、
根っこは同じだったのかもしれません。
そんな時代に、なんと最初からデータ改造機能が搭載されているという、
豪快な作品が登場しました。
それが、この『ベストプレープロ野球』なのです!
『ベストプレープロ野球』とは?監督になってリーグ優勝を目指せ!
1988年にアスキーから発売されたファミコン専用シミュレーションゲーム、
『ベストプレープロ野球』。
このゲームは、それまでの
「自分で選手を操作して野球を体験する」というジャンルに一石を投じ、
「監督目線で野球を楽しむ」という、当時としては非常に斬新な遊び方を提示しました。
確かに、『エモやんの10倍プロ野球』など似たタイプのゲームも存在しましたが、
本作の持つ完成度と自由度は、群を抜いていました。
ゲームの目的は、シンプルながらも奥深いもの。
プレイヤーは好きなプロ野球チームを選び、
そのチームの監督となって、リーグ優勝を目指します。
試合は基本的にオートで進行しますが、
その場の状況に応じて、的確な作戦を立て、
チームを勝利へと導くのがプレイヤーの役割です。
しかし、このゲームが他の野球ゲームと決定的に違ったのは、
「全ての選手データを好き勝手にいじれる」という、あまりにも画期的なシステムでした。
「この選手はバッティングが良かったからAにしよう」
「あの選手は足が遅いからDだね…」といった具合に、
自分の記憶や好みに合わせて、自由に選手の能力をカスタマイズできるのです。
当時のゲームでは改造ツールを使って行われていたような行為が、
このゲームでは「正々堂々」と、ゲームの機能として搭載されていたのですから、
これはもう驚きしかありません。
この自由度の高さによって、
プレイヤーは何時間でも、時間を忘れてゲームに熱中することができました。
さらに、選手の能力だけでなく、
「監督の信頼」というユニークな要素も存在しました。
たとえ能力が低くても、監督との信頼関係が厚ければスタメン起用される。
逆に、能力が高くても信頼関係が最悪ならベンチ要員に…。
そんな、まるで実際のプロ野球界のようなリアルな設定を、
自分なりに付け加えて楽しむことができたのも、このゲームの大きな魅力でした。
ラジオパーソナリティの伊集院光さんが、
このゲームをあまりにも愛しすぎて、
ノートに細かくオリジナル選手のストーリーを書きまくっていた、
という逸話はあまりにも有名です。
その熱中ぶりは、周囲から本気で心配されたほどだったとか。
既存の選手データを全て作り直し、
自分だけのリーグ戦を戦わせ、オリジナルな「脳内野球」を楽しむ――。
このファミコン史上トップクラスに素晴らしい、濃厚すぎる作品は、
多くのプレイヤーに夢と情熱を与えました。
「脳内野球」も「リアル作戦」も!二度美味しいゲーム体験
甲子園の監督という仕事は、
まさに「作戦を考えること」にその全てを捧げる、極めて大変な役割だと言われています。
どんな状況で、どんな作戦を立て、どうやってピンチを乗り切り、
どうやってチャンスをものにするのか。
その緻密な思考と決断の連続は、まさに野球の醍醐味そのものです。
この『ベストプレープロ野球』は、
そんな「甲子園の監督」が味わうであろう経験を、私たちに提供してくれました。
このゲームの最大のセールスポイントは、
もちろん「脳内野球」をゲーム上で具現化できることですが、
実は選手データをいじらなくても、監督目線でゲームを十分に楽しむことができるのです。
このゲームには、
十字キーの方向で直感的に作戦を伝えられる、画期的な操作方法が採用されていました。
例えば、上ボタンでバントのサイン、左ボタンでエンドラン、右ボタンでスチール。
守備時には、左ボタンで敬遠、上ボタンでランナー警戒、下ボタンでバッター警戒など、
瞬時に様々な指示が出せます。
さらに、守備位置も「浅め」「普通」「深め」と細かく設定できるため、
「このバッターはパワーが弱いから守備位置は浅めで」
「あのバッターはバントが得意だからバントシフトを敷こう」といった具合に、
ガチで奥深い作戦を練る楽しみがありました。
さすがはプロの選手たち。
与えられた作戦をほぼ確実に成功させてくれるため、
比較的ストレスなく、自分の采配が試合に影響を与える喜びを味わえました。
試合の経過は非常にシンプルで、
1試合にかかる時間はだいたい10分もかかりません。
しかし、真剣に作戦を考えていると、
20分あっても足りないほどの大熱戦に没頭できます。
もちろん、選手データをいじりまくって最強のチームを作り上げ、
圧倒的な戦力で勝ち進むのもこのゲームの最大の楽しみ方ではありますが、
あえてデータをいじらず、既存のデータのまま監督目線で楽しむのも、
また格別の面白さがありました。
野球漫画のような「脳内野球」で、自分だけのドラマを楽しむも良し。
あるいは、リアルな甲子園の監督のように、
緻密な作戦を練って勝利を目指すも良し。
この『ベストプレープロ野球』は、どちらのプレイスタイルでも最高に楽しめる、
稀有な作品なのです。
幻のソフトから定番へ!時を超えて愛される「脳内野球」の金字塔
実はこの『ベストプレープロ野球』、
発売当初は「幻のソフト」として有名だったそうです。
なんでも、初期出荷をかなり少なめに設定してしまったため、
一時的に市場から姿を消してしまったのだとか。
それまでの野球ゲームとは一線を画する新ジャンルだっただけに、
アスキー側もここまでの大ヒットを予想していなかったのかもしれません。
しかし、蓋を開けてみれば、その自由度の高さと奥深さから、
プレイヤーが「一生遊べるソフト」と評価するほどの人気を博し、
瞬く間に売り切れ状態となってしまったのでしょう。
ほどなくしてゲームは再出荷され、普通に購入できるようになりましたが、
もしリアルタイムでこのゲームの情報を耳にしていたら、
きっと誰もが「遊びたい!」と強く願ったに違いありません。
「選手データで遊ぶ」という、シンプルながらも奥深いコンセプトが、
時間を忘れて熱中できる名作へと昇華させたのです。
現在ではPS2版でリメイクもされていますので、
当時を懐かしみたい方や、この「脳内野球」の世界に飛び込んでみたい方は、
リメイク版をプレイしてみるのも良いでしょう。
豪華に遊ぶか、神経質に遊ぶか。
あなたならどちらのスタイルで、この『ベストプレープロ野球』を遊び尽くしますか?
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