晦・つきこもり: 日常の闇を描く、ブラックな短編小説集のようなサウンドノベル

1996年にバンプレスト(開発元はパンドラボックス)から発売された
スーパーファミコン用サウンドノベル「晦・つきこもり」。
おばあちゃんの七回忌で集まった親戚たちが、
暇つぶしに怪談を語り始めるという、なんとも不穏な幕開けのゲームです。
6人の親戚が語る、日常に潜む多様な恐怖体験
本作の目的は、
15歳の女の子である主人公となり、6人の親戚から恐怖の怪談を聞いていくこと。
一般的なサウンドノベルが1つの長いシナリオを進めるのに対し、
本作は短いシナリオを連続で体験していくシステムを採用しています。
「寝る前に30分だけ遊ぼうかな」という気分で、気軽に始められるのが魅力です。
前作「学校であった怖い話」が
学校を舞台に高校生の怪談を聞くのがメインだったのに対し、
本作では親戚の集まりというシチュエーションを活かし、より多様な怪談が展開されます。
- 看護師のお姉さんが語る病院の恐怖
- 冒険家のお兄さんが体験した山や海外での怪奇
- テレビプロデューサーが遭遇したテレビ局での出来事
- 小学生の視点から描かれる日常の怪談
- 主婦ならではの生活に密着した恐怖
- フリーターが経験した様々な職場の怪談
このように、前作が「高校生、高校生、高校生…」といった具合だったのに対し、
本作ではそれぞれの「道のプロ」が語る、
多種多様なシチュエーションの怪談を楽しむことができます。
この豊富なバリエーションこそが、本作最大の魅力と言えるでしょう。
膨大なシナリオと悪夢のようなバッドエンドの嵐
このシリーズの真骨頂とも言えるのが、その膨大なシナリオ数です。
怖い話を聞く順番によって、親戚たちが語る内容がガラリと変わるため、
看護師のお姉さんの話だけでも6種類、
冒険家のお兄さんの話も6種類といった具合に、
単純計算でも数十種類の怪談を体験できます。
さらに、その順番によってラスボス的なシナリオが変化するため、
何度でも繰り返し遊べる作りになっています。
しかし、サウンドノベルの強みはそれだけではありません。
ただ話を聞くだけでなく、
プレイヤーの選択肢によって何百種類もの結末が用意されています。
「お姉ちゃんだったらこんな時どうする?」
「どっちの方向に逃げたと思う?」といった問いかけに答えることで、
物語に感情移入し、最高の恐怖を味わうことができます。
そして、本作「晦・つきこもり」は、
バッドエンドの多さが前作をはるかに凌駕しています。
前作では、他人の怪談であれば
どんなに悲惨な結末でも次のシナリオに進むことができましたが、
本作では通常のシナリオにも容赦なくバッドエンドが用意されています。
例えば、
「あ?信じてないな、だったらそこに行ってみようか」でバッドエンド。
「なんで、俺の話を真面目に聞かないんだ!!」でバッドエンド。
「あれ?私の後ろに何かがいる?」でバッドエンド。
選択肢によっては、
プレイヤー自身の命に関わる結果を招くこともあるため、
今まで以上に真剣にゲームと向き合うことになります。
シナリオテキストが本当に素晴らしいため、
バッドエンドすらも全て見てしまいたくなる魅力があり、
「この選択肢は絶対にダメだろうけど、見てみたい!」という誘惑に駆られるプレイヤーも多かったのではないでしょうか。
前作も遊び応えは抜群でしたが、
本作はそれ以上にやり込み甲斐のある作品となっています。
美しいグラフィックと引き換えに失われた「怖さ」?
前作「学校であった怖い話」は、
怖すぎて泣きながらプレイし、1ヶ月は心にダメージを負うほどの衝撃がありました。
しかし、本作「晦・つきこもり」に関しては、
「怖いんだけど、そうでもない」というのが正直な印象です。
その理由は、ゲーム画面が非常に綺麗になったことにあります。
前作の「イラスト風な背景」が、
得体の知れないおどろおどろしい恐怖を掻き立ててくれたのに対し、
本作では「実写の背景」が使われています。
実写では、どうしても「作り物感」が出てしまい、恐怖が半減してしまうのです。
「おばけ怖い…あれ?めちゃくちゃ美人」といった具合に、
背景の美しさが逆に怖さを損ねてしまったのは、非常に惜しい点でした。
プレイステーション版の「学校であった怖い話」も、
背景のリアルさが怖さを打ち消していたため、
もし本作もあのイラスト風背景だったら、と想像せずにはいられません。
しかし、その一方で、「嫌な話の現実性」はとんでもないレベルに達しています。
恐怖というよりも、ブラックな短編小説を読んでいるような感覚で、
「嫌だな」という感情が勝るため、ホラーゲームが苦手な人でも楽しめるかもしれません。
風間先輩再び! 恐怖の合間の「ガリ」のような存在
前作で唯一、怖い話をせず、ギャグで場を和ませた「風間先輩」が、
本作にもゲストキャラクターとして登場します。
時には旅館の怪しげな親父、
時には社交ダンスクラブのモテ男、
時には小学生に怪しい物を売りつける露天商と、シナリオごとに役柄を変えて現れます。
そして、風間先輩が登場した瞬間、
それまでの緊迫した雰囲気が一変し、ギャグシナリオへと変わってしまうのです。
まさに、お寿司の「ガリ」のように、
口の中をさっぱりさせてくれる存在。
このギャグパートがあるからこそ、
次のシナリオの恐怖が何倍にも増幅されるため、
やはり風間先輩の存在は必要不可欠だったと言えるでしょう。
社会人にこそ遊んでほしい、人生経験が活きるホラーゲーム
「晦・つきこもり」は、ホラーゲームが苦手な人でも楽しめる作品です。
確かに後味の悪いシナリオも多数存在しますが、
恐怖よりも「嫌だな」という感情が勝るため、比較的気軽にプレイできるでしょう。
そして、このゲームは、大人になってからの方が何倍も楽しめるはずです。
看護師、冒険家、テレビプロデューサー、主婦、フリーターといった
様々な職業や人生経験を持つ人ほど、
ゲームに感情移入し、その恐怖をより身近に感じることができます。
前作が学生時代にプレイすることで恐怖が増幅されたのに対し、
本作は社会人になってからプレイすることで、その魅力がさらに深く理解できる、
まさに大人向けの作品です。
人生経験が豊富な人ほど深く心に響く、
この素晴らしいホラーゲームをぜひ体験してみてください。
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