レトロゲームとマンガとももクロと

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ホムンクルス  脳に穴を開け、心の闇を覗く。常識を破壊する、伝説の「トラウマ漫画」

脳に穴を開け、心の闇を覗く。常識を破壊する、伝説の「トラウマ漫画」

手塚治虫が遺した作品の中で、最も難解で、

そして読む者の心に深い傷跡を残す作品といえば

『奇子(あやこ)』を挙げる人は多いでしょう。

 

読み終えた後の、あの何とも言えない感情。

 

村上春樹の小説を読んだ後のような、

まるで酔っぱらっているかのような奇妙な感覚。

 

「この感情は、自分だけじゃないんだ…」そう思える作品に出会うことは、

とても貴重なことです。

 

もし、そんな感情を再び味わえる漫画があったとしたら?

 

今回ご紹介するのは、前半は読者の心を掴んで離さないミステリー、

後半は頭の中がパニックになるほどの狂気が渦巻く、トラウマ製造漫画

『ホムンクルス』

 

これは、あなたの理性を破壊し、思考の迷宮へと誘う、もう一つの傑作です。

 

 

「トレパネーション」から始まる、悪夢のような導入

 

2003年からビッグコミックスピリッツで連載されていた

『ホムンクルス』は、オカルト、ミステリー、サスペンスが複雑に絡み合った、

異様な雰囲気を持つ作品です。

 

物語の始まりは衝撃的です。

 

お金に困った主人公は、

高額な報酬と引き換えに、ある生体実験の被験者になります。

 

その実験とは、「トレパネーション」。

 

頭蓋骨に穴を開けることで、脳にかかるストレスを軽減し、

潜在能力を引き出すという、おぞましい実験です。

 

「頭に穴を開ける」というショッキングな設定。

 

読者は、この導入を読んだだけで

「一体この先どうなってしまうんだ…?」という強烈な好奇心に駆られます。

 

そして、実験を終えた主人公は、奇妙な能力を手に入れます。

 

それは、「他人の心の闇を視覚化する」という能力。

 

人助けをしていくうちに、

主人公は自分の心の闇とも向き合うことになります。

 

まるで、手塚治虫の『どろろ』が、精神世界を舞台にしているかのようです。

 

このダークでミステリアスな雰囲気に、多くの読者が魅了されました。

 

私も、書店でパラっと立ち読みしただけで、

「これはただの漫画じゃない。じっくり腰を据えて読まないと損だ!」

そう確信し、即座に全巻を購入したことを覚えています。

 

 

前半の「完璧なミステリー」と、後半の「狂気」

 

この漫画の最大の魅力は、

前半と後半で全く異なる顔を見せるところにあります。

 

【前半:読者を魅了する、完璧なミステリー】

 

連載当初の『ホムンクルス』は、紛れもなく最高のミステリー漫画でした。

 

主人公は、特殊能力を使ってさまざまな人間の心の闇を解決していきます。

 

それは、他人の心を救うと同時に、

自分自身の心も癒していくような、どこか感動的な展開です。

 

「相手の心の闇だと思っていたものが、実は自分自身の心の闇なのでは?」

という、精神世界を深く掘り下げたストーリーは、読者の心を鷲掴みにしました。

 

【後半:読者の理性を破壊する、サイコホラー】

 

しかし、物語が中盤に差し掛かると、突如として雰囲気が一変します。

 

それまでの「人助け」的な展開は影を潜め、

物語は主人公自身の精神世界へと深く潜っていきます。

 

それはまるで、作者自身が「トレパネーション」を受け、

人格が変わってしまったかのようでした。

 

前半のミステリー的な面白さは消え失せ、

読者はただひたすら、おどろおどろしいサイコホラーの世界に引きずり込まれていきます。

 

「一体、この漫画はどこへ向かっているんだ…?」

 

そう思っているうちに、物語は最後のページを迎えます。

 

そして、読み終えた読者は、こう呟くのです。

 

「…結局、これはどんな話だったんだ?」

 

前半のワクワク感と、後半の理解不能な展開。

この強烈な落差が、読者の心に深いダメージを与えます。

 

 

好きか嫌いか、意味が分かるか分からないか、それが問題だ

 

この漫画を読み終えた後、

「買わなきゃよかった…」と後悔する人もいるかもしれません。

 

しかし、不思議なことに、この漫画には中毒性があります。

 

「もう一度読んでみようかな…」

 

そう思って読み返してみると、

最初は嫌悪感を抱いていた後半の展開が、

なぜか「意外と癖になるな」と感じ始めるのです。

 

多くの問題点を抱えている作品かもしれません。

 

しかし、あの伝説的な『奇子』にも負けないほどの

強烈なパワーがあることは間違いありません。

 

前半は最高クラスのミステリー、後半は最高クラスに意味不明

 

こんな狂った漫画は、他に類を見ません。

 

「私は『奇子』が好きだった」という、

心に深いダメージを負うことに喜びを感じるあなたへ。

 

ぜひ、この『ホムンクルス』という、

底なし沼のような世界に足を踏み入れてみてください。

 

きっと、あなたの手にも負えない、不思議な体験が待っているはずです。

 

 

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