レトロゲームとマンガとももクロと

レトロゲームとマンガとももクロと

夜想曲 パッケージ詐欺とプロローグ詐欺が生み出した、傑作ミステリーサウンドノベル

パッケージ詐欺とプロローグ詐欺が生み出した、傑作ミステリーサウンドノベル

「うわ、この映画、絶対面白そうじゃん!」

 

誰もが一度は経験する、パッケージのビジュアルに惹かれて手にとった作品が、

期待を裏切る瞬間のガッカリ感。

 

それはゲームでも同じです。

 

不気味な肖像画、血まみれの手、

そして「殺意はそっと蘇る」という恐ろしいキャッチコピー。

 

プレイステーション用ソフト『夜想曲』は、

そのすべてがプレイヤーに「これは間違いなくホラーゲームだ」と告げています。

 

そして、ゲームを起動した瞬間に流れる、

誰もいない広い屋敷、鳴り響く柱時計、そして「幽霊が出る」と囁く警察官の声。

 

その圧倒的な恐怖は、プロローグだけでプレイヤーの心を掴み、

部屋から一歩も出たくないほどの絶望に突き落とします。

 

しかし、安心してください。

 

このゲームは、そのすべての期待を良い意味で裏切ります。

 

これは幽霊がさまようホラーゲームではありません。

 

これは、人間の欲望と悪意が渦巻く、本格的な推理アドベンチャーなのです。

 

 

赤川次郎が描く、謎に満ちた屋敷の物語

 

1998年にパックインソフトから発売された『夜想曲』は、

ミステリー小説の大家、

赤川次郎氏の『殺人を呼んだ本』を原作としたサウンドノベル作品です。

 

物語は、主人公が大学の単位取得のために、

夏休みの間、山奥にある広大な図書館の管理人を任されるところから始まります。

 

天国のようなリゾート地と聞いていたのに、

そこに広がっていたのはジャングルに囲まれた不気味な館。

 

一か月の間に膨大な書物を整理するという使命を負った主人公は、

地下の書庫で一冊の不思議な本を見つけます。

 

その本をきっかけに、

館の過去に隠された謎や、次々と起こる奇妙な事件に巻き込まれていくことになるのです。

 

このゲームは、全4話からなるオムニバス形式で物語が進行します。

  • 第1話:20年前にこの館で起きた、少年失踪事件の真相を追うエピソード。
  • 第2話:有名アイドルが巻き込まれた殺人事件を、館に集まった人々の中から推理するエピソード。
  • 第3話:3億円の遺産相続を巡る、人間の醜い部分が露わになるエピソード。
  • 第4話:そして、全ての謎が一つに繋がる完結編。

 

物語の途中で現れる選択肢によって展開がガラリと変わり、

あなたの推理や行動が結末を左右します。

 

また、主人公の性別を自由に選ぶことができるのもこのゲームの特徴。

 

男性主人公と女性主人公では、

同じ場面でも会話やモノローグが変化するため、

異なる視点から物語を楽しむことができます。

 

 

幽霊よりも恐ろしい、人間の狂気と向き合う推理の旅

 

『夜想曲』は、ホラーゲームとしての恐怖のピークがプロローグにあるため、

ホラーが苦手な人でも安心してプレイできます。

 

なぜなら、このゲームが本当に描いているのは、

幽霊や怪奇現象ではなく、人間が持つ本当の怖さだからです。

 

ストーリーは、時にバイオレンスで、

時に感情を揺さぶる感動的な展開を見せます。

 

プレイヤーは、館に秘められた謎を解き明かし、事件の犯人を推理し、

時には登場人物を救うために奔走することになります。

 

自分の推理がめちゃくちゃだった時の焦り、

絶対に助けたいと思う登場人物への感情移入、そして憎むべき犯人への怒り…。

 

このゲームの物語は、あなたの感情を揺さぶり、没入させる力が非常に高いです。

 

パッケージのホラーな雰囲気は、

あくまで「人間が引き起こす事件」をよりスリリングに見せるための演出に過ぎません。

 

そのギャップが、

このゲームを単なるサウンドノベルではなく、記憶に残る傑作へと押し上げているのです。

 

 

全てを解き明かすための、果てしなき旅

 

『夜想曲』は、通常のクリアだけでは物語のすべてを味わうことはできません。

 

真のエンディングである「完結編」をプレイするためには、

なんと本編のすべてのエンディングを見る必要があるのです。

 

その数は数十種類にも及びます。

 

3話までは順調に進んでも、

完結編にたどり着くには、ここからが本当の始まりです。

 

グッドエンディングだけではなく、

バッドエンディングやその他すべての結末を網羅して、

初めて図書館の謎が解き明かされます。

 

そして、このゲームには

オートスキップ機能や、選択肢まで戻る機能がありません。

 

一度選んだら、物語を最初からやり直す必要があります。

 

これは、非常に手間がかかる作業であり、

当時のプレイヤーを大いに苦しめました。

 

しかし、この「面倒くささ」こそが、

このゲームを語る上で欠かせない要素なのです。

 

本棚のエンディングリストが一つずつ埋まっていく達成感。

 

「あと〇冊」「あと〇冊」とカウントしながら、

コツコツとコンプリートを目指すこの作業は、苦労を上回る喜びを与えてくれます。

 

全てを解き明かしたいという知的好奇心が、プレイヤーを突き動かすのです。

 

 

恐怖と感動、そして知的好奇心を満たす物語

 

『夜想曲』は、幽霊が怖い人でも安心して楽しめる推理アドベンチャーであり、

物語の深さにどっぷりと浸りたい人に最高の体験を提供します。

 

プレイステーションのゲームアーカイブスで配信されているため、

今でも手軽にプレイすることが可能です。

 

また、DS版で1・2同梱版も発売されており、

遊びたい環境に応じて選ぶことができます。

 

さあ、その不気味なパッケージを手に取り、

謎に満ちた館の扉を開けてみてください。

 

あなたの推理と選択が、館の秘密を解き明かし、

登場人物の運命を導く鍵となります。

 

「開始15分は本当に怖かった。それ以降は、わりと人間が怖いだけだった。」

 

それこそが、今すぐこの名作を手に取る理由です。

 

 

こちらから購入できます