レトロゲームとマンガとももクロと

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太陽の裏に潜む闇。『テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン』は隠れたトラウマ製造機の王様だ

太陽の裏に潜む闇。『テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン』は隠れたトラウマ製造機の王様だ

 

かまいたちの夜やダブルキャストなど

子供の頃、ゲームで心を揺さぶられることはよくありました。

 

それがホラーゲームや戦争ゲームであれば、

ある程度の心の準備ができています。

 

しかし、何も知らない状態で、

明るく平和な世界観のゲームに潜む、

後味の悪い展開や残酷な真実に直面した時、それは単なる驚きではなく、

深いトラウマとして心に刻まれることがあります。

 

まるでおはぎを一口食べたら、中に針が仕込まれていたようなあの感覚です。

 

ギャグ満載の雰囲気から一転、

プレイヤーの倫理観をえぐるようなシリアスな展開を見せるゲームは、

『ひぐらしのなく頃に』のように、そのギャップゆえに忘れられない存在となります。

 

今回ご紹介する

『テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン』は、まさにそんなゲームでした。

 

子供心に忘れられない深いダメージを与え、

今でも語り継がれる、ゲームボーイ史に残る傑作なのです。

 

 

「なりきり師」が挑む、壮大な旅

 

『テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン』は、

2000年にナムコからゲームボーイ用ソフトとして発売されたRPGです。

 

テイルズシリーズの外伝作品であり、

初代『テイルズオブファンタジア』から100年後の世界が舞台となっています。

 

プレイヤーは、双子の兄弟であるディオとメルとなり、

自分たちの運命の意味を知るための旅に出ます。

 

ゲームのシステムは、王道的なRPGですが、テイルズシリーズお馴染みの要素も健在です。

  • アクション戦闘: フィールドでの移動はRPGですが、敵と遭遇すると横スクロールのアクションゲームに切り替わり、ボタンを組み合わせて必殺技や魔法を繰り出す、スピーディーなバトルが楽しめます。
  • 自動生成ダンジョン: ダンジョンは入るたびに構造が変わる自動生成方式。まるで『ドラゴンクエストモンスターズ』のように、膨大なダンジョンを探索し、最深部にいるボスを倒すことで次のダンジョンへと進むことができます。

 

そして、このゲームの最もユニークなシステムが「なりきり師」です。

 

プレイヤーは、様々な職業のコスチュームに着替えることで、

その職業になりきり、それぞれのスキルや魔法を使うことができます。

  • 剣士のコスチュームで剣の必殺技を放つ。
  • ナースのコスチュームで回復魔法を使う。
  • 魔法使いのコスチュームで強力な攻撃魔法を連発する。

 

この「なりきり師」のシステムが、

このゲームのやり込み要素を飛躍的に高めています。

 

全91種類にも及ぶコスチュームを集めるコレクション要素は、

飽きることなくプレイヤーをダンジョン探索へと駆り立てました。

 

 

ゲームボーイの常識を覆す、物語の深み

 

このゲームの序盤は、

ギャグ満載で明るく、まるで子供向けアニメのような雰囲気です。

 

しかし、物語が進むにつれて、その雰囲気は一変します。

 

このゲームは、

プレイヤーの心を成長させるための仕掛けが散りばめられています。

 

主人公の兄弟が、

旅を通じて「自由とは何か」「優しさとは何か」「死とは何か」といった

重いテーマに直面するのです。

 

特に衝撃的だったのは、物語の中盤で投げかけられる倫理的な問いかけです。

 

「二人が乗ると沈没する船に、自分と大事な人が乗っていたとしたら、あなたはどんな行動をとれば良いのか分かりますか?」

 

この唐突な問いかけは、

それまでお気楽にプレイしていた子供たちの心を、

一瞬にして深い思考へと引き込みました。

 

ゲームの難易度の高さから途中で挫折したプレイヤーも多かったと思いますが、

この深い展開こそが、このゲームの真骨頂だったのです。

 

何も知らない無邪気な子供だった主人公が、

葛藤を繰り返しながら成長していくのと同時に、

プレイヤーもまた、物語を通して人生の重いテーマと向き合う。

 

単なるお使いゲームではない、この深いストーリーこそが、

今なお多くの人の心に残り続ける理由です。

 

 

子供心に突き刺さった、ボエボエさんの物語

 

このゲームは、

街の人々の悩みを解決するお使いイベントが多数用意されています。

 

料理人になってわがままな客の要望に応えたり、

絵描きになって先祖の似顔絵を描いたり、

それぞれの「なりきり師」の能力を活かして問題を解決していきます。

 

しかし、その中でも特に異彩を放ち、

多くのプレイヤーに深いトラウマを植え付けたのが「ボエボエさん」のイベントです。

 

このボエボエさん、

最初は本当にどうしようもない悪人として登場します。

 

プレイヤーは、

ライトなノリで、悪人ボエボエさんを懲らしめるイベントに挑みます。

 

しかし、物語はそこで終わりません。

 

ボエボエさんが家賃を滞納して逃げ出したため、

借金を取り立てるという『ミナミの帝王』のような展開に発展します。

 

ボエボエさんを追いかけるうちに、

彼の悲しい過去が明らかになっていきます。

 

父親に「この世は金が全てだ!」と教えられて育ったこと、

人を信用できなくなったきっかけ、そして彼が重い病を患っていたこと…。

 

プレイヤーの感情は、

「嫌な奴」から「かわいそうな人」へと変わっていきます。

 

そして、借金の取り立てが終わり、

物語が「めでたしめでたし」で終わるかと思いきや、

ここからが本当のトラウマの始まりでした。

 

ボエボエさん自身が、

主人公たちに「悪事」の依頼をしてくるのです。

 

しかし、主人公たちはその依頼をきっぱりと断ります。

 

悪人を改心させて救済するという王道展開を真っ向から否定し、

孤独なボエボエさんは寂しそうに去っていく…。

 

当時、多くのプレイヤーが

この結末に深いモヤモヤと後味の悪さを感じました。

 

特に、ボエボエさんの名前を

「嫌いなクラスメート」にしていた子供たちは、

「あいつは嫌いだったけど、こんなひどい仕打ちを受けなくても…」と、

とてつもない罪悪感を抱いたそうです。

 

このイベントは、単なるゲームの悪人ではない、

生身の人間の悲哀を子供たちに突きつけました。

 

キャラクターに名前を付けられることで、

プレイヤーの感情を何倍にも増幅させるという、製作者のクレイジーな仕掛けが、

このゲームを伝説にしたのです。

 

 

大人になってこそ、味わいたい傑作

 

ゲームの難易度が高く、

途中で挫折してしまった人も多いかもしれませんが、

『なりきりダンジョン』は、後半の深いストーリーをプレイしてこそ真価が分かります。

 

PSPでリメイクされた

『テイルズオブファンタジア なりきりダンジョンX』も発売されており、

手軽にプレイしたい方はこちらを選ぶのも良いでしょう。

 

しかし、もしゲームボーイ本体を持っているなら、

安価な価格で手に入るこのオリジナル版をぜひプレイしてほしいと思います。

  • 全91種類のコスチュームを集める、究極のやり込み。
  • 倫理的な問いかけを投げかける、深いストーリー。
  • そして、子供心に忘れられないほどの衝撃を与えた、トラウマ級のイベント。

 

これらの要素が融合した、このゲームは、

ゲームボーイ史に名を刻む傑作です。

 

大人になった今だからこそ、その深い物語とテーマを、改めて味わってみてください。

 

 

こちらから購入できます